Archive for the ‘クラウド会計’ Category
会計が分からないのなら会計ソフトを買わない
東京都目黒区の税理士 海老名洋明です。
本年も残り1月半となり、年末調整、確定申告の時期が迫ってきました。
お陰様でえびな税理士事務所にも、確定申告前のお客様からお問い合わせを多く頂戴しております。
その中には、「簿記を知らない」けど「帳簿を何とか作成したから見てほしい」という方がいらっしゃいます。
本業の時間を割いて苦労して作成したことが伝わりますが、そこまで頑張らなくてもお客様、税理士の作業量、報酬のバランスを取れる方法があったのに、と感じることが多くありました。
そこで今回は、初めての申告で税理士に依頼するのであれば(少なくともえびな税理士事務所は)、これくらいの心持ちで臨めば十分ということをお伝えします。
最初から申告書に対応した帳簿を作ろうとしない
初めての申告から、会計や税務の知識があろうとなかろうと「損益計算書」「貸借対照表」を作ることになります(法人は両方必須、個人は場合によっては貸借対照表不要)。
経理の経験者でない限りは、「簿記」「借方」「貸方」といった言葉が高い壁に感じるはずです。
事業開始届を提出した後、税務署で2時間程度の講習が開かれますが、これだけで全部できるのでしたら誰も苦労しません。
自分で頑張ろうとする事業主の皆様は、ネットや知人の情報を基に会計ソフトを購入するものの、いつも使うソフトと異なる挙動にストレスを感じ、帳簿の作成が後回しになるという悪循環です。
そんな方には、いつも使い慣れたExcelを使って
- 日付 月と日を別のセルにすると作業が楽です。
- 金額 税込金額を入力しましょう。
- 内容 「●●コーヒー 打ち合わせ」といった感じでまとめるだけで十分です。
- 勘定科目 税理士が後で適切な科目に修正しますので直感で十分です。
これだけまとめていただければ、えびな税理士事務所では十分です。
ある程度のITスキルがある税理士でしたら、この方法で作ったExcelファイルを加工して、会計ソフトにインポートする方法で手早く会計帳簿を作ることができます。
会計が分からないのでしたら会計ソフトを最初から購入する必要はありません。
預金データをcsv形式で提示する
もちろん、会計事務所としては帳簿を作成している方がありがたいですが、預金通帳の実際の残高と帳簿上の残高が合っていない方がとても多いのが現状です。
その原因として
- 初期の残高(繰越残高)を適切に設定していない
- 事業外の取引を帳簿に反映させない(クラウド会計ソフトで特に多い)
ことが挙げられますが、この話が良く分からないのでしたら素直に
- ネットバンクから1年分の入出金明細を
- csv形式で
税理士に提示することをおすすめします。
通帳コピーでもいいですが、記帳量に比例して会計事務所側の作業量が多くなりますので、報酬を抑えたいのでしたら、csv形式で提示することをおすすめします。
会計ソフトを年払いで契約しない
預金の同期機能が売りのクラウド会計ソフトですが、会計事務所からの評価は高くなく(提示される帳簿の正確性が低い、動作が遅く作業が非効率といった理由)、若手の税理士ですらクラウド会計ソフト利用のお客様をお断りしている会計事務所もあるくらいです。
結局、どの会計ソフトも「使いこなす」ことが必須で、会計知識ゼロで申告までできるソフトは、よほど簡単な税制にならない限り(預金残高の増差に課税するとか)は永遠に現れません。
楽、便利というその会計ソフトで作った帳簿、合っているか確認しましたか?味見をしないでお客様に料理を出す料理屋はどこにもありません。
味見をしないで、塩(売上)が2倍がなったり、砂糖(源泉所得税)を入れ忘れた料理(帳簿)がお客様に提供された結果、後でクレーム(税務調査で追加納税)になったケースがたくさんあります。
税理士に確認してもらうことは大切ですが、最初から会計ソフトを購入してしまうと、税理士の選択の幅が狭まります。
自分に合う税理士を慎重に検討したいという方は、会計ソフトの契約をする前にExcelと預金のcsvファイルを持って、何人かの税理士に相談されることをおすすめします。お客様に最適な運用方法を提案してくれるはずです。
「企業の税務手続き完全電子化」はまだまだ遠い
目黒区の税理士 海老名洋明です。
2019年10月17日の日本経済新聞に
「請求書、紙の保存不要に 企業の税務手続き完全電子化 軽減税率対応しやすく」と題した記事
が掲載されていました。
記事では、2020年度の税制改正大綱に、企業の税務手続きで完全なペーパーレス化(電子化)を認めることを盛り込むとしています。
10月1日より10%と8%の消費税の複数税率制度が開始されましたが、レシートを見るとやはり会計処理が大変です。
その対応として、クラウド上の会計サービスを活用した書類の電子化を考えているようです。
えびな税理士事務所の税理士海老名は、多くの会計ソフトの使用経験を基に
- お客様と初対面の段階から
- 正直ベースでネット上には載っていない生の使用感、長所・短所をお伝えし
- 最適な運用方法のご提案
を行っており、2019年分の確定申告のご相談を受けた際もお客様から「そうだったの!?」「初めて聞いた」という声を多く頂戴しております。
この記事では、実務面の詳細は分かりませんが税理士海老名がいくつかコメントします。
電子化は確かに便利ではある
レシートや領収書は、申告が終えるとなかなか見ることはありませんし、保管スペースを食うばかりです。
自宅開業されている方は特に負担を感じていることでしょう。
その点、書類をすべて電子化すると保管スペースがゼロになりますからうれしいことでしょう。
実際、えびな税理士事務所とお客様とでは、GoogleDrive、Dropbox、チャットワーク、Slackといったツールでやり取りすることが多く、将来的に電子化がさらに広がることは確実です。
スキャンしておけばいい、というものではない
現在も「電子帳簿保存法」で、国税関係書類を電気媒体で保管することができます。
ただし、手続きが煩雑で、中小事業主にはハードルが高いものとなっています。
事前の申請、一定の解像度の指定、タイムスタンプ、などとても面倒です。
資料がべらぼうな量になる大企業向けと考えてよさそうです。
今回の改正でもう少し使い勝手のいいものしようと考えているようですが、それでも
レシートをスキャンしたデータをそのままパソコン上やクラウド上に保管しておけばいいというものではないといえそうです。
青色申告の承認申請のように気軽にできるものではありません。
クラウド上のサービスを提供する業者がサービスを停止したら
税理士海老名は何度も指摘していますが、
クラウド上のサービスが停止したらどうするの?
という疑問には業者も税務署も答えていません。
クラウド上の会計ソフトを提供する業者は、新興企業を中心に赤字決算で資本政策で純資産を維持しています。
業者の倒産、サーバーの設置場所での災害、サービスの提供を予告なく停止したら、
データにアクセスできなくなる可能性がゼロではありません。
年に1回まとめてクラウド上のサービスを利用するユーザーの場合、気付いたときにデータにアクセスできなかった、ということもあり得ます。
確定申告や税務調査があった際は、電子媒体で保存した領収書類の原本は既に廃棄されているでしょうから、対応が大変困難になります。
クラウド上の経費機能を使いこなすユーザーは少数
レシートをスキャンして会計上の仕訳を作成する機能がありますが、
- 使用には追加料金が必要
- スキャンの精度が低い
- 数字の入った店名の数字や電話番号を拾う
- レジ袋割引といったイレギュラーへの対応が不十分
- 手書きの領収書がまだまだ多く、ダブルスタンダードでの記帳がなくならない
- 手打ちの方が早いと考える税理士が多く、ユーザーへの導入支援が進んでいない
といった理由でクラウド上の経費機能は広がっていません。
強引な値上げリスク
電子で書類を保存できるという理由だけでクラウド会計ソフトに移行するのはおすすめしません。
現在のクラウド会計ソフトの使用料は、インストール型の会計ソフトの概ね2年分です。
2-3年ごとの値上げが続いており、今後も新たな機能の追加と称して大幅な値上げをすることが想定されます。
2019年6月には、マネーフォワードにおいて個別のサービスの利用者に対して他のサービスを抱き合わせに料金を2倍以上に値上げし、利用者に大きな混乱を与えました。
動画配信、配達料無料などのメリットを感じやすいAmazonが年会費を上げることに納得感があっても、クラウド会計ソフトには不十分な点が多く、値上げへの抵抗感が強いようです。
会計ソフトを購入せずに、自分でExcelで経費を管理することや会計事務所に丸投げするやり方もまだまだ有力です。
フィンテック企業以外の従来からの業者の動向も注視を
既存の会計ソフトの業者も、使い勝手はともかくクラウドを使用した会計機能は一応あります。
この改正案に対して、様子見なのか、一気に攻めてくるのか分かりませんが、他のクラウド会計ソフトにも大きな変化があるかもしれません。
現実的にレシートなし・完全電子化はずっと先
えびな税理士事務所は30-40代のパソコンが商売道具のお客様が多いですが、
そのなかでもIT関係のコンサルティング業やシステムエンジニアの方以外の方にとって
クラウド上の各種機能を使いこなすのはハードルが高いようです。
税理士 海老名本人の確定申告では、Excelで経費関係を入力し、弥生会計へインポートする形式を採っています。
レシートの量が少ないので、1か月をまとめてホチキス留めして保存しています。
仮に現状よりも使い勝手が良い税制改正があったとしても、ITスキルの高いひとり事業主または経理担当者がいない限りは完全電子化はなかなか進まないのでは、と推測しています。
まずは上手にレシートの保管を
情報の保管先が、紙だろうとクラウドだろうと、まずは元となる領収書、レシート、請求書を整理しないと話が始まりません。
レシートがくしゃくしゃでしたらスキャンすらできません。
- 月別に
- 内容ごとに
- 伸ばして
保管することから始めましょう。
初めての税理士・税理士の乗り換えの時にしてほしい3つのこと
東京都目黒区の税理士 海老名洋明です。
この記事を書いている2019年7月も、お陰様で個人の確定申告のご相談を頂戴しております。
お客様が真剣に事業の成長を考えているからこそ、1年の折り返しの時期、申告期限の半年以上前にご相談を受けるわけで、当事務所としては全力でサポートしたいと考えております。
一方で、ご相談を受けお手伝いをさせていただく中で、あらかじめこうしておけばもっとスムーズだったのにと感じることがありました。
初めて税理士に依頼することを検討している方、税理士の乗り換えを検討されている方に対して、税理士目線からまずはこれをしてほしいポイント3つをまとめました。
ポイント1 会計・人事ソフトの利用申込みは相談後に
税理士への相談前にクラウド型ソフトを中心に利用の申込みをしてしまう方がいらっしゃいますが、これはもったいないです。
業者の宣伝文句に踊らされず、まずは税理士へ相談して、最適な運用方法を検討してから利用申込をしましょう。
- 税理士経由の購入で割引になることも
弥生会計の使用を希望される場合、「弥生PAP会員」の税理士経由で購入すると大幅に割引されます。えびな税理士事務所は、「弥生PAP会員」です。
- 無料ソフトで足りる場合が多い
給与の場合、フリーウェイ給与は無料ですが、freee人事労務だと年額25,660円、しかも従業員4名以上だと追加料金が発生します。
会計についても、Excelのピボットテーブルの集計で何とかなる場合もあります。
- 年額ではなく月額契約を
どうしても契約したいという場合でも、使用感が合わなかった、後任の税理士の提案に合わせる、といったことがありますので、月額契約をおすすめします。
ポイント2 会計データのバックアップを
税理士は、まずは過去の会計帳簿を基に会計帳簿を作成、確認します。
お客様がクラウド会計ソフトを継続して利用する場合でも、会計事務所ではインストール型会計ソフト上で会計データを別途バックアップしている場合が多くあります。
不測の事態(災害というより業者の倒産等でデータにアクセスできなくなる危険性)に備えて、会計データをバックアップしてから税理士と契約するとスムーズです。
仮に今使っている会計ソフトの利用をやめたいと考えている場合も、税理士に相談後に利用停止の手続きをしましょう。
どうしても課金を止めたい場合も、データの消去を含めた退会ではなく、支払停止だけしておき、データそのものは見ることができる状態にしておきましょう。
- csvファイルで
PDFファイルで「総勘定元帳」を提示しても足りますが、加えて仕訳のcsvファイルを取っておくと、税理士側は過去の仕訳を検索しやすく、有用な情報を提示してくれることが多くなります。
- 弥生会計形式で
何をバックアップしていいのかよくわからないのでしたら、多くの税理士が利用している弥生会計の形式で仕訳データをエクスポートするのが無難です。
マネーフォワード 各種設定→他社ソフトデータの移行→弥生会計へデータを移行する「エクスポート」
freee 集計→仕訳帳→(右上の)インポート・エクスポート→各社CSV・PDFエクスポート→弥生会計→出力開始
からファイルを入手、その旨を後任の税理士に伝えましょう。
- あるだけすべて
使い始めてからすべての年のデータをバックアップしましょう。
ポイント3 納品状況の確認を
税理士を乗り換えた後は、前任の税理士から過去の処理内容の問合わせへの回答や資料の提示を求めるのは基本的に困難です。
契約解除する前に、契約書を確認の上、納品状況を確認し、納品されていないと思われる書類の提示を求めましょう。
また、初めて税理士へ依頼する際も、下記の書類があると相談がスムーズになります。
過去に預けた資料を返してもらう
当事務所は、紙の書類はなるべく早期に返却していますが、会計事務所によっては1年間の資料をずっと抱えたまま、ということがあります。
また、月次報酬を支払って記帳代行を依頼しているにもかかわらず、1年間預けた資料をため込む場合もありますので、契約内容によっては報酬の減額交渉の余地があると考えます。
「総勘定元帳」
「総勘定元帳」とは、勘定科目ごとに日付、金額、取引内容をまとめたものです。税務調査の際は、総勘定元帳を基に調査をしますので、これがないと青色申告取消しといった最悪の事態が想定されます。会計事務所によっては、紙、データのいずれ形でも提示しない場合がありますので、総勘定元帳が手元にあるか確認しましょう。
「源泉徴収簿」「賃金台帳」
12月の年末調整の際に作成されますが、会計事務所側でデータを抱えて納品しない場合がありますので、紙の書類があるか確認しましょう。
申告書、税務関係の届出書
過去の申告書(法人税、所得税、消費税、償却資産、1年分だけでなくあるだけ全部)
「事業開始届」
「法人設立届出書」
「青色申告の承認申請書」
「給与支払事務所等の開設等届出書」
「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」
「申告期限の延長の特例の申請書」
など、A4用紙の明朝体で書かれた書類をすべて提示しましょう。有用なアドバイスを得られるかもしれませんし、契約後の業務がスムーズになります。
電子申告のID、パスワード
税務署 「利用者識別番号」と暗証番号
地方税 「利用者ID」と暗証番号
申告書に挟まっている場合が多いですが、会計事務所側が暗証番号を伝えていない場合がありますので、聞き出しておきましょう。
クラウド会計コラム㉑~2019年4月2日のマネーフォワード値上げのお知らせ
東京都目黒区(桜の名所の目黒川沿い)の税理士 海老名洋明です。
4月2日の夕方、マネーフォワード社よりこのようなメールが届きました。
Pagedownを6回しないと読み切れない長文です。簡単言うと値上げのお知らせです。
税理士業界では、その内容が静かに話題になっています。
プランによっては使用料金が2倍
内容が複雑で理解しづらいのですが、新旧プランの料金計算が簡単にできるようになっています。
(税抜で表示されているので×1.08をお忘れなく)
法人の最も安いプランで2,138円(税込)から4,298円(税込)への2倍の値上げです。
さらに所定の手続きをしないと6,458円(税込)、知らずに引き落とされるとびっくりしますね。
値付けは相手の勝手ですが、それにしても思い切った値上げ幅です。
それほど商品に自信があるのか(プロから見ると大して改善されていないのですが)、経営がうまくいっていないのか、勘ぐってしまいますね。
「全サービスを個別の契約で導入すると料金が高くなる」といった理由をホームページ上で述べていますが、
①マネーフォワード社のサービスは、ひとり事業主(個人、法人問わず)が多く会計機能以外の利用者はそれほど多くなかったため他の機能も付けてユーザーの拡大を狙った
②使われていない機能に関する開発費用(ソフトウエアといった固定資産に計上されます)の減損処理を嫌って抱き合わせにしてしまおうという、上場企業ならではの都合を気にしたものと私は推測しています。
税理士は寝耳に水
この値上げの通知は、ユーザーとマネーフォワードパートナー(税理士や公認会計士といった専門家)にほぼ同時にメールによりされています。
過去にお客様へマネーフォワードの導入をおすすめした税理士からすると、寝耳に水です。
マネーフォワード社は税理士をビジネスパートナーとしてとらえていながら、
善後策の提案もなく「他の機能も付けるからよろしく」とメールひとつで済ませる段取りはないだろうと感じた税理士は多かったのではないのでしょうか。
値上げは仕方なくても倍ですから、お客様への説明がつきません。
お客様が納得して利用しているときはともかく、税理士としては、2年程度のサイクルで大幅な値上げをする会計ソフトを開業間もないお客様に自信をもっておすすめしづらくなった、という感想です。
えびな税理士事務所のお客様の反応
えびな税理士事務所でマネーフォワードを使用しているお客様にこの料金改定をお伝えしたところ、そもそも知らなかった(メールだと気づきづらいですよね)お客様ばかりで、
改定前後の料金をお伝えしたら、他のソフトに乗り換えるという反応がほとんどです。
放っておくと2倍以上の値上げとなりますので、
会計機能のみのお客様→弥生会計へ乗り換え、Excel(後述)の活用
請求機能のみのお客様→Misocaへ乗り換え
という風に、お客様には大型連休前に動いてもらいました。
やはり、同時期に1,000円の値上げをしたAmazonプライム年会費と比べて、納得度が低いようです。
クラウド会計ソフトの最大の短所
使いやすさ、機能面は置いといて、値上げリスクが高いことがあります。
インストール型のソフトは一度買ってしまえば基本的に買い替える必要はありません。
(消費税率の引上げもあるかもしれませんが、そもそも消費税の納税義務のない場合は気にする必要はありませんし、納税義務があるときも「税込経理」をすることで日常の経理処理は何とかなります。)
値段だけでfreeeへの乗り換えも危ない?
マネーフォワードをやめてfreeeへ乗り換える、という選択もあり得ますが、結末は同じと思えてなりません。
freeeの使用料金の変遷
法人プランの最も安いプラン(値上げの都度、プラン名称に変更があります)を例に
月額で支払いの方の例(税込)
2018年10月から | 2,570円 | 20%値上げ |
2017年5月まで2018年9月まで | 2,138円 | 8%値上げ |
2017年4月まで | 1,980円 |
年額で支払いの方の例(税込)
2019年 | 25,660円 | 20%値上げ |
2018年 | 21,384円 | |
2017年 | 21,384円 | 8%値上げ |
2016年 | 19,800円 |
このまとめはfreeeユーザーの利用履歴を参考にしています。
あるお客様は途中から使うのをやめてしまい、全く使っていないのに利用料が毎月引き落とされていました。
そのお客様については、過去のデータをすべて当事務所のインストール型の弥生会計に移行し、freeeの契約を解除してもらいました。
いわゆる幽霊ユーザーの使用料や、会社設立freeeを使用したユーザーに対する電子公告機能年額1,000円の自動引落し、といった売上がfreee社を支えている部分もあるのです。
利用料だけをみてfreeeへの乗り換えも危険
マネーフォワード社もfreee社の決算公告を見る限り利益体質には程遠く、freee社もいずれプランの見直しと称して、再度大幅な値上げということも考えられるところです。
(2019.12.11追記)
予想通り、freeeは2020年2月より「大幅に」値上げします。
個人で概ね月額220円(税込)の値上げ、法人で機能制限による「大幅な値上げ」がされます。
「配賦」機能を引き続き使用したい場合は、ベーシックプラン(月額5,258円(税込))からプロフェッショナルプラン(月額52,536円(税込))へ移行しなければならないようです。
10倍ですから、freee社の対応に「マジでカチン」ときたユーザーもいらっしゃるのではないのでしょうか。
価格はそのままで量を減らす、食品で見られる方法と同じですね。でも、食品でもさすがに量を10分の1にはしません。
価格を理由に、マネーフォワードに移行するのはおすすめしません。なぜなら(最初に戻る)。
値上げの将来予想
どこのクラウド会計ソフトもそのような課金の動きはありませんが、
- 預金・カードの同期ひとつ当たり月額●●円
なんてことを(そう遠くない将来)突然通知するのでは、予想しています。
Excelのテーブル形式、ピボットの活用を
この値上げのお知らせを見て、解約を決意したユーザーは多いことでしょうが、その後の会計処理をどうしようか困っている方も多いと思います。
ある程度のITスキル(Excelが使えれば十分、ショートカットキーが使えればなおOK)があれば、
- 損益→Excelのテーブル形式とピボットを活用
- 預金データ→ネットバンクによるcsvデータまたは通帳コピーを税理士へ提示する
運用とすることも一案です。
記帳代行を依頼せずにある程度は自分で損益を把握しておきたい、けど会計ソフト代がもったいないと考える方には、自計化と記帳代行の間という形にはなるものの検討の余地があると思います。
(経理経験がある方には、素直にインストール型の弥生会計を購入された方が余計なストレスがないと思います。PAP会員の当事務所経由でしたら優待価格で購入できます)
実際、えびな税理士事務所においても、クラウド会計ソフトの使用に挫折した、または値上げを機に使用をやめたいというお客様にフォーマットを提示したところ、好評を博しております。
まずは、お客様側で
- 過去のデータをすべてバックアップする
- 支払いを停止する(退会処理はせずに、データの閲覧はできるようにしておく)
- 資料を整理して(ExcelでまとめるとなおOK)税理士へ相談する
テーブル形式??ピボット??の方は
- Excel(スプレッドシートでもnumbersでも表計算ソフトなら何でもOK)で日付と金額と内容をまとめておく
の対応を頂くことで、ITに強いえびな税理士事務所は迅速に対応します。
クラウド会計コラム⑳~「楽」「便利」に作ったその申告書、合っていますか?預金残高、源泉所得税は特に注意!
東京都目黒区の税理士 海老名洋明です。
確定申告期限の3月15日が迫っております。
当事務所のお客様においても、クラウド会計ソフトを利用される方はある程度ITスキルの高くて、簿記の知識がなくても自分で調べて形にしようとする意識の高い方が多く、頭が下がる思いです。
一方で、クラウド会計ソフトを使う方で、
デザインなど(Macユーザーが多いですね)の報酬の源泉所得税を徴収される方が
「楽」「便利」に作った青色申告決算書、確定申告書が実は結構危ない、という事例に多く遭遇しました。
預金口座同期のワナ~口座残高合っていますか?
クラウド会計ソフトは、預金口座の同期機能を売りにしています。
入出金について、日付と金額、そして勘定科目の候補が表示され、クリックするだけで簡単に決算書ができることを売り文句にしています。
ところで、個人事業主の申告においては事業と家事分(私用分)を明確に区分しましょうという決まりがあります。
その決まりに基づいて、損益については事業の部分のみ決算書の「損益計算書」に反映させるわけですが、「貸借対照表」はそうとは限らないのです。
預金口座を同期した際、右に表示される、
freee「無視」、マネーフォワード「対象外」の意味を理解していますか?
freee「無視」、マネーフォワード「対象外」の意味
事業用の普通預金の残高は、青色申告決算書4ページ目の「貸借対照表」に記載します。
12月31日現在の残高を1円違わず正確に記載する必要があります。
でも、同期機能にワナがあります。預金の同期の仕訳候補の横にある、「無視」「対象外」ボタンを無意識に押していませんか?
「無視」「対象外」は私用の取引を外すためにあるボタンではありません。
例えば、預金口座がふたつあって、口座間で資金の移動をしたとき、同期したそれぞれの口座で同じ仕訳がふたつ登録されてしまいます(「二重仕訳」といいます)。
すなわち、A口座からB口座へ100万円を移動したとき、同期したそれぞれの口座について、
A口座で「B口座から100万円受け取った」
B口座で「A口座へ100万円送金した」
が同じ取引にも関わらず、それぞれ別の取引として2回同じ仕訳が登録されてしまうのです。
そのようなことを防ぐために、A口座かB口座のどちらかで「無視」「対象外」という処理をして、登録される仕訳をひとつにするのです。
口座がひとつなら「無視」「対象外」を押さない
個人事業主の方は特に、このボタンを私用の取引を除くボタンとしてとらえてしまっています。
事業用と私用の両方に使用している口座の場合、事業用の取引だけを登録して、私用(例えば生活用のお金の引出)を「無視」「対象外」したところ入金だけ仕訳が登録された結果、帳簿上は大金持ちに、ということが起こります。
これって、税務署からみるととても目立ちますよ。何かあるのでは?と税務調査になり、帳簿がぐちゃぐちゃで青色申告取消し、なんて可能性もあります。
「無視」「対象外」の表現はかなり前からそのままで、先ほどの事象についても両社とも知っていますが、ユーザー向けの説明のある場所が分かりづらく、いつまでたっても改善されません。
多少の簿記知識がなくては、正しい(後で追加で税金を納付することのない、または、最初の申告で税金を支払いすぎることのない)決算書や申告書を作ることができないことを示していると思います。
源泉所得税分の売上計上もれ~支払調書のワナ
預金の同期機能に関連して、請求金額から源泉所得税を引かれて入金ということがよくあります。
預金口座へに売上代金が入金された際、何の疑問もなく入金額を「売上」として登録するユーザーが多いかと思います。
そして、翌年1月から2月にかけて請求先から1年の売上金額と源泉徴収税額が記載された支払調書が送られてきます。
ここに書いてある源泉所得税がワナなんですよね。
支払調書に記載された源泉徴収税額をそのまま申告書へ転記してしまう(1表44欄や第2表「所得の内訳」の「所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額」)のですよね。
源泉所得税はあくまで所得税の前払いです。
結局のところ、入金額だけを売上に計上していると、源泉所得税分の売上が計上もれとなってしまうのです。
この現象は、クラウド会計ソフトに限った現象ではありません。
でも、クラウド会計ソフトをご利用の方の多くは自力で何とかなると思って、同期されたデータそのままを登録して、合っているかどうかもわからぬまま「楽」「便利」に決算書、申告書を提出している場合がとても多いと思います。
支払調書は参考程度に
支払調書は、支払者が税務署へ提出するものであって、支払いを受けるこのページをご覧の皆さんに提出する義務はありません。
また、支払調書は申告書ではないので、本当にあっているのかも分かりません。
支払調書は、「請求ベース」で1年間の支払金額と源泉徴収税額を記載するものです(12月請求1月入金も反映させる)。しかし、現実には実務上の簡便性から「支払いベース」(12月請求1月入金も反映されない)で作成されている場合が多いです。
ですので、支払調書に書いてあることをそのまま確定申告書の売上や源泉徴収税額に記載するのは、実は危ないのです。
開業初年度ほど、税理士のアドバイスの活用を
売上が漏れていたという方は、既に申告していても今から修正すべきです。
日常の会計処理、税額の計算だけでなく、事業供用割合をどうしようか、社会保険料は?(所得税は少なくても実は社会保険料が多額の方がとても多いのです)、消費税の納税義務は?といった事業主の疑問、不安はたくさんあります。
このような疑問、不安を解決するヒントは税理士にあります。
えびな税理士事務所は、真面目に事業に取り組む事業主の皆様を全力でサポートします。
特に、開業して間もない個人、法人の事業主の皆様の気持ち、熱意を、同じ立場の人間としてとてもよく理解できます。
クラウド会計コラム⑲~利用開始当初の支払いは月払いで~
クラウド税理士&ファイリングデザイナー税理士の目黒区の若手税理士 海老名洋明です。
2019年も早くも2月に入り、個人事業主の方、12月決算法人の方においては、そろそろ確定申告が気になる時期かと思います。
今年初めて確定申告される方へのアドバイスもかねて、実際に開業したてのお客様と税理士海老名との体験をもとに少しばかりアドバイスします。
会計ソフトの利用申込みは資料を整理してから
テストでも最初から簡単な問題から解くように、確定申告でも慌てずにまずは簡単なことから始めましょう。
簡単なこと、それは「資料を集めて整理すること」です。
整理にも順番があります。
- 1 まずは1年分の資料を集めましょう
- 2 レシートの日付を見て月ごとに12分割しましょう。しわしわのレシートは伸ばします。
- 3 毎月のレシートの束を、さらに内容ごとに分けましょう
(勘定科目を意識せずにタクシー代、打ち合わせ代といったくくりでOK) - 4 レシートの量をみて、自分でやるのか、税理士に依頼するのかを考えましょう。
- 5 自分でがんばる!→会計ソフトを購入しましょう。
- 6 もう嫌だ、仕事したい→税理士を探しましょう。
最初は気合が入るのは分かります。
でも、間違っても最初に会計ソフトを買ってはいけません。
会計ソフトを買うのは一番最後です。税理士に任せるのなら会計ソフトを買う必要すらありません。
クラウド会計ソフトの利用料のワナ
インストール型の会計ソフトは一度買ったら追加の支払いはありません。
一方で、クラウド会計ソフトは月払いまたは年払いプランで契約するため、
解約しない限りは支払は続きます。
仮にクラウド会計ソフトを使ってみたけれども使いづらいから解約したい、という事態になっても、
年払契約だと返金はしてくれません。
では、次の支払い時の前に解約すればいいや、と思うかしれませんがその時には支払のことを忘れています。
解約忘れ、使い方が分からなくてフェードアウトという理由で、使わないのに使用料が引き落とされる、という方が多いのが実情です。
クラウド会計ソフトのベンダーの商売は、実はほとんど使用しない会員からの使用料収入で経営が成り立っているスポーツジムと似たようなものなのです。
年払いと月払いの差はせいぜい使用料の1か月分程度です。
保険の意味も込めて、最初の契約は月払いにしておきましょう。
クラウド会計ソフトの解約関係のトラブルは多く、消費者センターの相談案件にもなっています。
ご利用の申込は慎重になさってください。
簿記知識ゼロでクラウド会計ソフトを使うのは危険
twitterのつぶやきでは、クラウド会計ソフトは「楽」「便利」という言葉があふれていますが、
クラウド会計ソフトは「答え合わせ」まではしてくれません。
「楽」「便利」とつぶやいていても、プロの税理士から見ると、実際に合っているのか確かめていない、または合っているのか理解していないユーザーがとても多いのです。
どんなに預金口座の同期が「楽」「便利」でも、私用の取引をすべて「対象外」「無視」したために
普通預金勘定が全く合わず、もはや青色申告の条件すらあやしい帳簿があふれています。
また、請求機能・クレジットカード明細と会計機能を連動させた場合、請求時と入金時で売上が二重に計上される、クレジット払いと現金払いで経費が二重に計上されるといった事象が発生し、正しい損益になっていない帳簿が多数あります。
税理士海老名は、このようなクラウド会計ソフトに潜む危険性を税理士会の定期総会にて発言し、後日情報システム部門に詳細な情報提供をしました。
このような事象については、東京都に登録されている税理士を統括する東京税理士会でも問題意識を持っており、2018年8月に「クラウド会計ソフトのデータ取り込み時の注意点について」と題して、各税理士に周知しています。
「楽」「便利」でもつじつまのあわない帳簿で、税金が2倍なんてことが本当にあります。
税務調査があったら青色申告の取消しなんてことが本当に起こります。
「本当に私の帳簿や申告書は合っているのだろうか」と少しでも感じた方は、せめて初年度だけでも税理士のアドバイスを受けた方がいいと断言できます。
えびな税理士事務所では
開業初年度の方(特にシステムエンジニア、ライター、デザイナーのひとり事業主の方が多いです)で、
- 帳簿が合っているのか不安
- 税務署に行くのが面倒
- 便利な使い方を知りたい
というお客様に対しては、親切丁寧にアドバイスし、迅速に確定申告を終えています。
さらに、経費があまりかからないひとり事業主の場合、納税額が膨らむ傾向があります。
そのような方についても適正な経費の範囲をお客様と検討するとともに、経費または所得控除の対象となる共済をご提案するなどお客様目線でのアドバイスをしております。
クラウド会計コラム⑱~年末年始へ向けた注意喚起とfreee障害について~
東京都目黒区のクラウド税理士 海老名洋明です。
今年も1週間少々となりました。
クラウド会計ソフトにおいても、この1年色々なこと(危ないことが多いですが)が起こりました。
中でも最大の危機は、
2018年10月31日のfreeeでの緊急メンテナンスと称した全サービス停止障害
だと思います。
クラウド会計コラム⑭~2018年10月31日freee障害から学ぶバックアップの重要性~
その顛末は
同日中 ユーザーに対するメールによる周知
11月20日 ホームページ上に「システム障害に対するご報告」と題したお知らせを掲示
12月23日現在 サポート責任者に対して、全ユーザーにメール、ログイン後画面等で報告しない理由を質問しているものの回答なし
と、一貫して全ユーザーに情報を提供しない企業姿勢に疑問を呈してきました。
最高開発責任者のブログ
そんな中、12月22日に「システム障害のおわびとまなび」と称して
フリー社の開発メンバーブログに、最高開発責任者の記事が掲載されていました。
https://developers.freee.co.jp/entry/2018/12/22/235610
長文であり、文面の表現からは具体的に何を言っているのか理解しきれませんが、同業の方ならある程度は理解できる内容なのでしょう。
現場レベルの生の声で障害の顛末を掲載する手法はなかなかありません。
過去の報告との整合は?
えびな税理士事務所では、当該不具合についてフリー社から対面による説明を提案されましたが、記録に残すことを重視し、文面による回答を求めました。
11月8日に社長名によるA4用紙1枚の内容の薄い文書回答がありましたが、
その後、12月22日に開発担当者ブログによる「おわび」があったということは、
社長名による文書回答はいったい何? なぜ後出しによる報告? 2か月近く何やっていたの?
といった疑問が生じます。
この点、段取りという観点から物事を考えられる40-50代の部長レベルの「会社で揉まれた」人材がフリー社にはいないものと思われます。
実際、フリー社の窓口のみならずサポート責任者レベルですら、正直に申し上げて教養レベルの低い、薄っぺらい文章しか書けない人材しかいませんでした。
(たとえ下手な文章でも、全ユーザー、税理士が分かるように、潔く過ちを認めて説明を尽くせばこんな記事は書かないのですが、とかく事を大きくしたくないという姑息さが目につくのです)
年末に一度全データバックアップを
年末にも何らかのメンテナンスと称して、大規模な障害が起こる可能性は(さらに年末年始休暇中を理由に対応が大幅に遅れる可能性も)ゼロでありません。
また、確定申告時期はアクセスが急増することにより、サーバの障害が発生する可能性もあります。
仮に会計事務所に確定申告を依頼していても、
過去3年分の仕訳日記帳と(できれば総勘定元帳も)をお客様自らバックアップ
しておきましょう。
csv形式だと、多くの会計事務所が使用している弥生会計にもデータを移行できるのでなおいいでしょう。
バックアップの方法
freeeの場合 レポート→仕訳帳→(右上の)インポート・エクスポート→各社CSV・PDFエクスポート→弥生会計→そのまま出力開始
マネーフォワード会計の場合 各種設定→他社ソフトデータの移行→弥生会計→(一番下の)仕訳をエクスポート
ベンダーからの補償は1年分の使用料が上限
仮にベンダーの過失でデータが消失した結果、税務申告ができず追加の納税が発生、といった事象が生じても、
既に支払った使用料の1年分までしか補償してくれません。
障害のおわびを開発メンバーの「ブログ」で済ませる感性
開発メンバーは開発が目的となっていて、その先のユーザーの事情を思料できないのでしょう。
お客様、税理士といったビジネスパートナーの生の話を自分の足で聞こうとしないのですから当然なのかもしれません。
ブログでは、表面的にはお詫びしていますが、月末に障害を起こすことによるユーザーに及ぼす影響については何ら言及されていません。
実際に業務に支障をきたしたユーザーが自らフリー社のホームページなり、Yahoo!JAPANのタイムライン検索なりで当該ページに気付かなければ、報告を見ることができません。
「報告書を見たかったらあなたが探してね」と言っているようなもので、真摯でも丁寧でもない不誠実極まりない対応です。
おそらく、開発担当者にはユーザーのことは分からない、または関係ないという感覚なのでしょう。
「ご迷惑」ならともかく「ご心配」をお掛けして申し訳ない、との一言から、
命の次に大事なお客様の財産に関わる、という自覚を持ち合わせているとは思えません。
現場の都合ばかりを優先して、その先のお客様を見ていなかったために、製造業で相次いだ不祥事の構図と似ています。
「学んで」いる場合ではありません。結果を残してなんぼです。
税理士海老名がかつて勤務していた食品工場では、たとえ単価数十円の食品でも、
お客様の命に関わるとの緊張感で知恵知識を総動員して365日働いていました。
それに比べ、お客様から年数万円の使用料を得ているベンダーは何て浅はかなプロ意識でしょうか。
会計ソフトは命には関わらないというかもしれませんが、お金が無くなったらどうなるか分かりますか?
この開発ブログの文章は私には自己陶酔にしか見えません。お客様を、人間をなめています。
ブログの最後の一文から分かる意識
「重ねて、利用者の皆様にシステム障害によりご迷惑、ご心配をお掛けしましたことをお詫び申し上げるとともに、お客様への価値を安全に、かつ最大最速で届けられるようfreeeの開発体制を進化させ続けていきたいと思います。
つきましては、freeeの開発基盤を進化させていくエンジニアを募集しております。 興味があれば、ぜひご連絡ください!」
外部に出る責任者の文書を、推敲してもらうことはしないのでしょうかね。
最後の一言から、結局のところ自分のことしか考えていないのでしょう。
ビジネスパーソンとしての底の浅さを感じざるを得ません。
ユーザーの皆さまへの投げかけ
仮にベンダーが倒産その他不測の事態でサービスを提供できなくなったとしても、
ベンダーはホームページ上におわびを掲載するだけでユーザーの皆さまを全く守ってくれません。
戦後から血の通った人間として国民との信頼関係を構築してきた税理士と、
設立数年のクラウド会計ソフトのベンダーのどちらを信じますか?
クラウド会計ソフトのベンダーとの付き合い方
ベンダーの基本的姿勢
この1年、クラウド会計ソフトのベンダーとは何度も厳しいやり取りをしましたが、
こちらがいくらユーザーの不利益を指摘してもテンプレート回答ばかりで、暖簾に腕押しというのが現状です。
ベンダーの売り手視線でしか、物事をとらえることができないのです。
やり取りの中で、
「イノベーションにはミスもつきものだからこれくらいの不具合は受容してくれないと困る」
「若い会社なのだから許してください、私たちは未熟なのだから教えてください」
「だから仮に申告期限に遅れても税務署側で配慮してほしい」
「将来的に会計データを税務署と共有すれば解決する」
「個人事業主だから大した影響はないでしょ」
といったマインドが漂います。
しかし、これらはあくまでベンダーの勝手の考え方であり、現状ではクラウド会計だからと言って税務署側からの特段の配慮はありません。
また、会計データを税務署と共有するという考え方は、一部のベンダーが公的な会議で発言しており、個人情報の観点から非常に問題があると税理士海老名は考えます。
このあたり、長年の実績とシェアを有する弥生会計を中心としたインストール型会計ソフトのベンダーの方が、安心できます。
2018年にわかった税理士から見たクラウド会計ソフトの問題点
2018年当初はクラウド会計ソフトが更にシェアを伸ばし、使用する税理士も増えると予想していましたが、思ったほど広く普及しなかったというのが感想です。
多くのプレスリリースを出しましたが、肝心の機能の安定や改善は遅々として進まず、「外面だけ」でベンダーの価値が落ちたと感じます。
・当該ブログにあるようにベンダーの規模拡大に管理が追い付いてない
・同時に社員の質が低下し、ビジネススキルが低いうえユーザー視線に欠き、自社サービスを十分に理解していない
・不具合の修正が追い付いていないとベンダー自身が認めている
・ベンダーが近い将来(直近の確定申告期に発生する可能性が高いと考えます)またどんな障害を起こすか分からない
・サービスが縮小傾向でユーザーの不満度が高まっているうえに、再び使用料が値上げされる可能性が高く、割安感がなくなってきている
・ベンダーは経常的に赤字で資金調達により経営を維持する状態が続いており、経営危機により突如サービスを受けられなくなる可能性がある
・ベンダーがお客様に不要なサービスを一方的に提供し、知らぬ間にお客様が不利益を被る可能性がある
・若手税理士間でも、いわゆるフィンテック企業であるベンダーの変質に気付き始め、お客様に自信をもっておすすめできなくなりつつある
・2018年に露呈した様々な問題点が税理士会の会長以下、ベテランから若手まで業界に広く知られることとなり、従来の会計ソフトを再評価する動きがある
・税務調査時も、税理士が関与しないクラウド会計ソフトを使用した帳簿に対する視線が厳しいとの情報あり
ということから、税理士としては今のクオリティのクラウド会計ソフトは、リスクの説明なしにはとてもおすすめできません。
ひとり事業主で税理士の関与がない方以外にはリスクが大きすぎる
と考えます。
ひとりでクラウド会計ソフトをご利用の方の不安を解消します
ヘルプデスクは何も助けてくれません
コールセンター勤務を経験された方(私も短期間ですが経験があります)ならわかると思いますが、電話の先の人材は派遣会社経由で会社を知らない、といった場合がほとんどです。
クラウド会計ソフトのヘルプデスクの人材の雇用形態は知りませんが、間違いなく会計も税務も知識をほとんど持ち合わせていません。
簿記検定を受けたことがあればいい方で、2級があればエース級でしょう。
フローチャートでこう聞かれたらこう返せ、困ったら上に回せ、の作業を繰り返しているだけです。
そのヘルプにもつながりづらいし、何も解決しないし、で時間の無駄になることが多いです。
有料のサポートプランに加入していても基本的な対応は変わりません。
そもそも、税理士法の関係から、税務上の疑問(例えば、これは経費になるの?)に回答することはできないのです。
プロの税理士によるサポートのご活用を
えびな税理士事務所の税理士 海老名は、プロの税理士としてお客様の疑問や不安に丁寧に向き合います。
お客様ひとりひとりのために心を込めたオーダーメードのサービスを提供します。
クラウド会計ソフトに潜む危険な点や注意すべき点をお客様に十分に説明するとともに、
東京税理士会の定期総会での質問、
日本税理士会連合会、東京税理士会との懇談会での会長以下との懇談会での情報発信といった形で、
お客様と密接にかかわる税理士業界に対しても積極的に行動しています。
クラウド会計ソフトを使用していて不安に思っている方は、遠慮なくご連絡ください。
クラウド会計コラム⑰~資金調達機能(オンライン融資)のご利用は慎重に~
東京都目黒区のクラウド税理士 海老名洋明です。
12月というと事業主様の立場だとボーナスの支給、個人の立場だと年末年始の準備と、
何かとお金が飛んでいく時期です。
事業主の方にとって、運転資金の確保は頭を悩ます問題です。
マネーフォワードクラウド会計の資金調達機能
えびな税理士事務所の画面に突然「資金調達」機能が表示されるようになりました。
特に現在は資金調達の必要はないので驚いたのですが、中身を確認したところ、
「マネーフォワード クラウド会計・確定申告を利用開始してから1年経過している事業所の、オーナー権限を持ったユーザー」
を対象に表示されるので、使い始めて1年が経ったらこんな画面が突然現れるかもしれません。
知らないうちに、「クラウド資金調達」にユーザー登録されてしまいます。(内容が内容だけにデリカシーがないと思いますが)
資金調達の不要な方はすぐに退会しましょう。
なお、退会しても会計機能の利用には影響しません。
商品内容はビジネスローン
お分かりとは思いますが、お金はタダでもらえるわけではありません。
商品としては「ビジネスローン」であり、日本政策金融公庫の制度融資とかではありません。
詳細はマネーフォワード社のページに譲りますが、スピーディに資金調達ができるの特長です。
銀行口座をデータ連携した上で、会計データを金融機関へ提出する流れになるようです。
金利も3.5%から13.5%(2018年12月現在)と結構な利率です。
マネーフォワード社にも手数料が入るでしょうから、普通に考えると割高でしょうね。
手元の資金の状態だけでなく、開業したとき、新規事業に乗り出すとき、といった場面によって適切な資金調達の方法が異なります。
個人のお財布を見られるのですから、間違ってもいくら借りられるのかなと軽い気持ちで、
ネットでお買い物をする感覚で簡単に金融機関に個人情報を提出してはいけません。
書面で融資を申し込むわけでないので、どこからどこまで金融機関に情報がいくのか本人には分からないのです。
お金を借りたいのでしたら、税理士の力を借りる方法もあります。
経産省の「認定支援機関」に登録された税理士を経由すると、有利になる場合があります。
えびな税理士事務所は、認定支援機関に登録されています。
個人情報保護法に抵触するおそれ
個人情報保護法23条は、次のように規定してます。
「個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。」
正確ではありませんが、大まかにいうと、事業者は個人(法人は対象外)の名前や生年月日といった情報を、本人の同意なしに第三者へ提供していけません、ということです。
今回のマネーフォワード社だけでなく、freee社も資金調達機能がありますが、例えば、提供したデータの中に個人の名前が入っていたら、個人情報保護法に抵触し思わぬところで不利益を被る恐れがあります。
トップ画面の今後
各種法令の制限から現状では難しいかもしれませんが、将来的にトップ画面にこんなものがでかでかと表示されるかもしれません。
ファクタリング
freeeには既にありますが、今後はマネーフォワードもファクタリングに手を出すかもしれませんね。
ファクタリングとは、利用する立場から簡単に言うと、売掛債権を買い取ってもらって、現金を手にすることです。
短期的な資金がほしい場合に行われる取引ですが、一般的には資金繰りが厳しい場合に行われます。
当然、売上債権を下回る金額で買い取られることになり、通常の借入よりも条件は悪くなります。
怪しいものになると例えばこんな取引もあります。
1 売掛金100を売却して現金60が入金される
2 後日100を支払って売掛金を買い戻す
結局入金60-出金100=赤字40となります。
40はグレーゾーン金利顔負けな金額ですが、手数料?利息?といった債権譲渡契約なのか金銭消費貸借契約といった、法律面からデリケートな問題もあります。
ベンダーがまさか町金融さながらの取引をトップ画面からできるようはしないとは思いますが、何が起こるか分かりません。
生命保険の勧誘
黒字の金額によって、全額損金タイプの生命保険の勧誘画面が表示される
(法律の関係から簡単にはいかないでしょうが)、なんて展開もあるかもしれませんね。
結局トップ画面にいらない情報が増えていく
利用したいユーザーならいいのですが、利用しないユーザーにとっては不要な情報ばかりが増えていきますね。
日本製のガラケーのようです。供給側の一方的な都合が前面に出ています。
マネーフォワードクラウドのトップ画面は、以前からユーザー、税理士双方から評判が芳しくありません。
画面上に有用な情報がほとんどないし、カスタマイズもできない、これは多くのユーザーが感じていて要望もあると思うのですが、
私がクラウド会計ソフトを使い始めてからこの点は全く改善されませんね。
前期比較の損益とか、月次の推移とか、毎日見る情報はどの会計ソフトもなぜかトップ画面には出てきません。
私にとっては、マネーフォワードクラウド会計の画面の8割はいらない情報ですね。
先日の新電力しかりこのビジネスローンによる資金調達しかり、
会計機能とは離れた新サービス(といっても不要な方がほとんど)の話が多いです。
いつまで経っても総勘定元帳では「旧形式」と「新形式(β)」が両方表示される状態ですし、
会計機能の改善がとても遅く、クラウド会計ソフトにこれ以上の進化は望めないかもしれません。
ユーザーや税理士の生の声を聞こうとしないので当然でしょう。
クラウド会計ソフトへの過大な期待は禁物
クラウド会計ソフトに期待しすぎずに、従前のインストール型ソフトと冷静に対比してご利用を検討されることをおすすめします。
これまで弥生会計をご利用の方で、特に不便を感じないのでしたら、そのまま弥生会計をご利用される方がいいかと思います。
クラウド会計ソフト使用の最大のメリットは銀行口座との同期機能です。
逆に言えばメリットはそれしかありません。
銀行口座については、ネットバンクをご利用でしたら、csvでデータを抽出して、加工することで対応することが可能です。
ちょっとしたノウハウが要りますので、ITに強いえびな税理士事務所にお任せください。
クラウド会計コラム⑯~ベンダー発信の軽いノリの営業メールにご注意を~
東京都目黒区のクラウド税理士 海老名洋明です。
2018年も残り半月を切りました。
えびな税理士事務所においては、この1年間、お陰様で新たなお客様に恵まれました。
税理士 海老名の過去の経験をフル活用したサービスをご提供したところ、お客様からは、
話を丁寧に聞いてくれる
説明を尽くす
資料が見やすい、文章が論理的
といった言葉を頂戴し大変感謝しております。
真摯に事業に、税理士を含めた取引先に向き合うお客様が偉いのであって、私は大したことはしておりません。
こんなことを思いながら1年を振り返りながらも、12月の税理士業界は年末調整の仕事が残っています。
そんな中、12月中旬にマネーフォワード社から一足早いクリスマスプレゼントがやってきました。
新電力のご案内!?
お客様の従業員の1年間の税額を決める年末調整という大事な業務をしていたところ、
そのクリスマスプレゼントは突然やってきました。
簡単に言うと、税理士の顧問先を新電力に契約させたら、税理士に手数料が入るという営業です。
絵文字付きで、取引相手も不明確な内容で、私は気持ち悪い、不快、の感想しかありませんでした。
同業の若手税理士も一様に、ユーザーや税理士をなめている、ふざけている、といった反応でした。
軽いノリの文面から新手の詐欺!?と思う方もいらっしゃるかもしれません。
このベンダーは、ユーザーや税理士を手数料目的の道具としてしかとらえていないのでしょう。
(裏を返せば、こういう話に乗る税理士もたくさんいるのでしょうね)
なお、この案内は一部の税理士のみに送られているようですが、こんなノリの会社ですからユーザーにもある日突然こんな具体性のない怪しい勧誘が来るかもしれません。
問い合わせるのは自由ですが、まずは税理士に相談することをおすすめします。
税理士の重責
税理士は命の次に大事な国民の財産に触れる重責を担っています。
税理士はこの時期、サラリーマンの年税額を決める年末調整という大切な業務を行っています。
こんなときに、税理士に対してこんな軽いノリの営業をしてくるとは、
上場企業の品性を疑うとともに、
お客様の財産を守るのは税理士、という思いを改めて強くしました。
ベンダーのビジネスパーソンとしての致命的な欠点
お客様、税理士に対する理解の欠如
残念ながらクラウド会計ソフトのベンダーは、まっとうな税理士なら当たり前の上記の考え方が理解できないようです。
この件については、マネーフォワード社に厳重に抗議しましたが、同社は管理職を含め社員が全体に若く、国民の権利や税理士業務に対する理解が全く抜け落ちています。
問題の本質は「不快な思いをさせる」ことではなく、「納税者の権利が脅かされる」ことです。
このことを何回言っても、マネーフォワード社もfreee社も全く理解しません。
「いいもの売っているのに何でみんな買わないの?」といった売り手の傲慢さすら感じます。
この感覚が変わらない限りシェア拡大は永遠に無理でしょう。
地道な人間関係の構築の軽視
加えて、クラウド会計ソフトのベンダーは、
日頃からお客様と対面して血の通った人間として信頼関係を構築する
といった税理士なら(というより営業をされる方なら)当たり前の地道な行動をとても軽視します。
足を使って現場でユーザーや税理士の生の声をろくに聞かず、田町や五反田のオフィスで仕事ができると勘違いした20-30代の人間が多いのではないでしょうか。
だから、このベンダーの社員たちは、顧客や税理士(というより一ビジネスパーソン)の考え方や意見を今後も理解しない(できない)と思います。
マネーフォワード社にしろ、freee社にしろ、登録時だけ対面(またはハングアウト)し、
厳しい意見があったら、抗議があったら会ってお詫びさせてください(しかも税務代理人たる国家資格者に対して年末に日時指定でとは失笑ものです)とは、既に手遅れです。
営業担当者、さらにその上長の中身の薄い回答からビジネスパーソンとしての底の浅さがすぐに分かります。
地頭はそれなりにいいと思われますがとても残念な「痛い」方々で、ただただ不幸なことです。
会計ソフトのクオリティもさることながら、社員の質、意識のレベルが本当に大学を卒業したのかと思えるほど想像以上に低いですね。
こんな程度の人と時間を割いて会うほど、お客様も税理士も暇ではありません。
この観点からも、長年の実績を有する既存のベンダーの牙城を崩すのは極めて困難でしょう。
えびな税理士事務所の考え方
サービスのご提供の基本的な考え方
お客様に対して、有効でない保険の提案や本件のような新電力の提案は一切行いません。
いわゆる「儲かる話」には何らかのワナがあると考えます。当事務所には、そのワナをかいくぐる能力をあいにく持ち合わせておりません。
愚直に本業で儲けるのがシンプルでもっとも儲かり、その本業で儲ける方法はお客様自身が一番よく理解されているものと考えます。
ですので、えびな税理士事務所は、税務的視点からの経営のアドバイスは喜んでしますが、余計なお世話と感じられるような「経営指導」はしません。
税理士 海老名の性格
えびな税理士事務所の税理士 海老名はとても正直な人間です。
学生時代に漁師さんに、卒業後は食品工場の製造現場で人にもまれた経験を活かし、お客様の信頼を得るよう包み隠さずお話しします。
初対面のときも、ご契約後も話し方は変わりません(営業トークはいたしません)。
メールの文面は、すべて税理士 海老名がお客様ためだけに考えて書きます。
お客様のご要望に合わせて、心を込めてオーダーメイドのサービスを提供することをお約束します。
(このページを読まれた方はコワいと思われるかもしれませんが、真面目に事業に取り組むお客様にはとことん尽くします)
さいごに
AI、ICTの進展はあれど、えびな税理士事務所のお客様は目黒区を中心としたご近所の方が多くを占めております。
お客様が税理士を選ぶポイントは、物理的な距離もさることながら、人と人の心のつながりであることは今も昔も変わりません。
初回のご相談、御見積は無料で承りますので、当事務所ホームページをご覧になってフィーリング合うと感じましたら遠慮なくご連絡ください。
クラウド会計コラム⑮~利用規約の読み比べ
東京都目黒区のクラウド税理士 海老名洋明です。
これまでクラウド会計ソフトを使用しても、データのバックアップは必要であることを繰り返し述べてきました。
ベンダーが倒産したら、サーバーがダウンしたら、せっかく苦労して入力した会計データに一生アクセスできなくなるかもしれません。
この点、パソコンは壊れてもハードディスクがあればデータを助け出すことも可能ですので、クラウド会計ソフトこそ緊急時の備えが必要であると考えます。
ところで、クラウド会計ソフトのベンダーのデータ管理体制について、確認したことはありますでしょうか。
今回は、マネーフォワード社、freee社の利用規約から、データ管理の体制を確認したいと思います。
データバックアップの規約
両社の利用規約を比べると、微妙にスタンスが異なることが分かります。
マネーフォワード社の場合
利用規約第16条(データバックアップ)
1 当社は、契約者のデータ等を、定期的なバックアップにより保管します。このバックアップでは、契約者のデータ等を、遠隔地保管を含めて3重に保管します。ただし、契約者においても、本サービスの利用に関連して入力、提供または伝送するデータ等について、必要な情報は自己の責任で保全するものとします。
2 当社は、当社システムの障害等によって契約者のデータ等が消失した場合、当社がバックアップしたデータ等を用いて復旧するものとします(契約者毎の要望に応じて、バックアップしたデータ等を提供するものではありません。)。
3 当社は、バックアップを、原則として毎日行います(契約者毎の要望に応じて、バックアップの日時を調整するものではありません。)。ただし、当社は、当社の裁量により連続7日間を限度としてバックアップを行わない期間を設けることができるものとします。
4 第2項に基づくデータ等の復旧後なお、当社システムの障害等によって契約者が本サービスにログインできない場合、 当社は、当該契約者に対し、CSVファイル形式その他当社が適当と定める方法でデータ等を提供することができるものとします。
(第5項以下は省略)
ユーザーも自己の責任でデータを保全するけれども、マネーフォワード社においてもデータを毎日バックアップして、遠隔地を含めて3重に保管します、もしダメでもCSVファイル等でデータを提供します、というところでしょうか。
割と積極的な文言ではないのでしょうか。
freee社の場合
利用規約第11条(バックアップ)
1 会員は、本サービスを通じて当社が提供し、または会員が取得した情報の全てについて、自己の責任において記録し、保存・管理します。
2 会員は、会員情報について、自己の責任においてバックアップ作業(当社が提供する本サービスの機能を利用する場合を含みますが、それに限りません)を行うものとし、当社は、バックアップデータが存在しないこと、または会員がバックアップ作業を適切に実施しなかったこと等により発生した会員の損害および不利益につき、一切の責任を負いません。
3 当社は、会員情報をバックアップとして記録することがあります。ただし、前項に定める会員の責任において行うバックアップを補完するものではなく、会員情報の復旧を保証するものではありません。
4 有料会員以外の会員は、会員情報の一部が一定期間をもって自動的に消去されることを予め了承します。
会員情報とは、利用規約第1条(定義)(8)より、
「本サービスのために当社が管理するサーバーに保存された各種情報や通信記録その他の会員の一切の情報をいい、本サービスを通じて当社が提供し、または会員が取得した情報を含みます。」とありますので、入力した会計データを含んでいると解されます。
そこで、マネーフォワード社と大きく異なるのは、freee社は積極的にデータをバックアップすることを約していないということです。(何もしていないことはないとは思いますが)
また、データの保管はすべてユーザーの責任で行うように読み取れます。
仮にfreee社の何らかの障害によりデータが消失しても、こちらでバックアップしていないからリカバリーできません、バックアップしないあなたが悪いのです、と読み取れないこともありません。
現実を見ずに利用規約だけをもって管理体制を比較するのは危険であり、どちらのサービスがより優れているかは判断することはできないと考えますが、両社の書きぶりが大分異なることはお分かり頂けると思います。
損害賠償はどうなっているの?
とはいえ、ベンダー側に重過失があった場合でもベンダーはあなたが悪い、とはさすがにいえないでしょうから、損害賠償の条項を両社とも設けてあります。
マネーフォワード社の場合
利用規約第25条(保証の否認及び免責)
11. 当社は、本サービスに関連して契約者が被った損害について、当社に故意又は重過失があったときを除き、一切賠償の責任を負いません。なお、当社に故意又は重過失があった場合、及び消費者契約法の適用その他の理由により、本項その他当社の損害賠償責任を免責する規定にかかわらず当社が契約者に対して損害賠償責任を負う場合においても、当社の賠償責任の範囲は、当社の責に帰すべき事由により現実に発生した直接かつ通常の損害に限られるものとし、かつ、損害の事由が生じた時点から遡って過去1年間に当該契約者から現実に受領した本サービスの利用料金の総額を上限とします。
簡単に言うと、マネーフォワード社の故意又は重過失で損害が生じた場合は、過去1年間で支払った利用料金を上限に損害を賠償しますというところでしょうか。
freee社の場合
利用規約第23条 (損害賠償及び免責)
当社は、本サービスに関して会員に生じた損害について、当社に故意または重過失が認められる場合には、当該損害の直接の原因となったサービスについて、当該会員から受領した利用料金の1か月分に相当する額を上限としてその損害を賠償し、それ以外の損害については一切その責任を負いません。
マネーフォワード社と表現は少々異なりますが、こちらも故意又は重過失で損害が生じた場合は、過去1年間で支払った利用料金を上限に損害を賠償します、と言っています。
利用料金1年分が上限!?
ということは、会計機能について、大まかに法人については月2,000円×12月=24,000円、個人については月1,000円×12月=12,000円が損害賠償の上限ということになります。
会計以外の機能を使用していたとしても、損害賠償の金額はせいぜい数万円が上限です。
当事務所では、決算処理時に正規の簿記の原則に則った会計帳簿を作成できなかった(貸借不一致仕訳が登録された)freee社に対して、厳重に抗議のうえ、1年分の利用料金を返金させたことがあります。
具体的に損害賠償が生じる場合をなかなか想定しづらいかもしれまんが、
一番痛いのはサービスが停止したため確定申告を期限内にできなくなった場合です。
直近においても2018年10月31日に緊急メンテナンスと称してfreee社の全サービスが停止したことがありました。
クラウド会計コラム⑭~2018年10月31日freee障害から学ぶバックアップの重要性~
期限後申告になると、無申告加算税、延滞税といった本来払う必要がなかった税金の追加の納付、場合によっては青色申告の取消し、といったことが起こります。
さらに、金融機関等取引先からの信用の低下を招きかねません。
これが、3月15日に起こったとしたら、ベンダーは規約に則り1年分の利用代金しか返してくれません。
ちなみに、税務署は会計ソフトの不具合を理由に延長してもいいよ、とは言ってくれません。大規模な災害が起こらない限りは何も助けてくれないとお考え下さい。
税額が多額の場合は損害大、でも賠償は利用料金1年分
フリーランスなど小規模な事業を営んでいる場合は、仮にクラウド会計ソフトが利用できなくなったことにより期限後申告になったとしても、金銭面にそれほど大きな影響は生じないかもしれません。
しかし、取引規模が大きい場合(多くは法人です)、税額も何百万円、何千万円にもなることも十分に考えられますから、仮にベンダー側の重過失により申告期限に間に合わなかった場合の影響は甚大です。
追加の税金の納付だけなく、取引の停止を求められたり、下手をすると株主から訴訟を起こされる可能性だってゼロではありません。
そんな場合においても、ベンダーからの損害賠償は利用料金の1年分だけです。
ベンダーに訴訟を起こす気力のあるユーザーはそうはいないでしょう。
「大規模な」事業者はクラウド会計ソフトの安易な利用は危険
クラウド会計ソフトにおいては、預金やカード明細の同期機能など、経理業務の効率化に資する機能があることは事実です。
しかし、「大規模な」事業者の方においては、ここで述べた危険性を認識せずにクラウド会計ソフトを使用されるのは大変危険であると申し上げざるを得ません。
多少値が張ると思っても、保険の意味で素直に長年の実績のある弥生会計、勘定奉行、会計事務所が使用している会計ソフトを使用された方が安心かと思います。
税理士による正直な会計ソフト(弥生会計、マネーフォワードクラウド、freee)の比較(2018年12月現在)
「大規模な」と言葉を濁しましたが、例えば
毎年の多額の納税が生じる方、
申告する税目(事業税の外形標準課税、事業所税その他)の多い方、
事業所が多い方(均等割の納付先が多くなります)
が該当するでしょう。クラウド会計ソフトの導入を検討されている方は、毎年どれくらいの税額を納付しているのかご確認ください。
クラウド税理士を標榜しながら、こんなことを申し上げるのは自己矛盾かもしれませんが、これからの個人、法人の確定申告の繁忙期にあたり、リスクを周知するためあえてはっきりと書きました。
えびな税理士事務所の税理士海老名は、20種に渡る会計ソフト、税務ソフトを使用経験を有し、それぞれの長所短所を熟知しています。
クラウド会計ソフト、弥生会計の双方対応可能ですので、この会計ソフトでいいの?といったご相談に喜んで対応いたします。
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