クラウド会計コラム⑨~東京税理士会定期総会での情報発信~

東京都目黒区のクラウド税理士 海老名洋明です。

クラウド会計ソフトのユーザーは現在も増え続けています。
クラウド会計ソフトの各ベンダーが自社の優位性を訴えておりますが、
その一方で、確定申告を行う納税者の方々にとって危険な事象も多く存在します。
今年もクラウド会計ソフトを利用した多くのお客様の確定申告書の作成及び申告をさせていただきましたが、
従来のインストール型会計ソフトでは見られない欠陥や会計処理の誤りを目の当たりしました。

そこで、2018年6月18日開催の東京税理士会の定期総会にて、若手クラウド税理士の海老名がクラウド会計の現状について情報提供するとともに質問をしてきました。

クラウド会計は適切に使いこなさいとこれだけ危ない

クラウド会計は上手に使うと経理業務が格段に効率化しますが、使い方を誤ると大損を被りかねません。

例えば、こんな現象が現実に起こっています。

でも、ベンダー側はこのような不都合な真実を決して明かそうとはしません。

 

1 売上や経費が2倍になる現象 

請求書機能と会計機能の双方を適切に使いこなせなかったことによる事象です。

同一の取引に対して、請求書機能から掛売上、入金時に現金売上の2回売上が計上されてしまう現象が、クラウド会計ソフトには実に多いのです。

適切に修正しないと、売上が2倍→税額が2倍なるだけでなく、2年後に誤って消費税を納付してしまうこともあり得ます。

(参考記事)クラウド会計コラム④~クラウド会計ここが危ない~

 

2 消費税の帳簿要件を満たさない危険性

カードとの連動→勘定科目自動学習は便利な機能ですが、備考欄に「どこから」「何を買ったか」を記載しないと、税務調査時に消費税を余計に納付することになる危険性があります。

(参考記事)クラウド会計コラム①~クラウド税理士の視点~

 

3 貸借不一致仕訳が登録される現象、重大な欠陥を放置しユーザーに注意喚起しない企業姿勢

ベンダーが「致命的な欠陥」と認めながら、ユーザーにも税理士にも一切情報を開示しようとしません。

1年以上前から事象を把握しているにも関わらず、すでに登録された貸借不一致仕訳を除去する措置やユーザーへの注意喚起を一切行っておらず、極めて悪質性が高いと考えます。

(参考記事)クラウド会計コラム⑧~クラウド会計に向いている人、向いていない人~

 

東京税理士会への質問の内容

(情報提供)
1 2018年6月、税理士海老名が使用したある有名クラウド会計ソフトで、貸借不一致の仕訳が登録されたまま、差額を貸借対照表上で無理やり一致させるという会計常識では信じられない現象があった。
2 この現象に気付かず申告してしまった税理士や納税者がいたと思われる。
3 ベンダーに確認したところ、1年近く前からこの現象を把握しており致命的な欠陥であると認めている。
4 それにも関わらずベンダーはユーザーに一切注意喚起をしていないことから、極めて悪質性が高いと考える。

(質問)
1 東京税理士会ではクラウド会計ソフトの中にはこのような重大な欠陥が存在すること、また、クラウド会計ソフトは発展途上ということを認識しているか。
2 発展途上であると認識しているなら、税理士への情報提供、周知といったアプローチのほか、重大な欠陥についてはソフト名を明示して、現象を注意喚起するといった活動を行っていただきたいが、その予定はあるか。

(要望)
税理士の業務にも影響が大きく、税理士ひいては納税者へ被害が広がらないよう是非周知を行っていただきたい。

東京税理士会情報システム部の回答

現在、クラウド会計については税理士会の支部巡回研修で対応している。
クラウド会計のベンダーは多く、税理士や納税者は適正なベンダーを選択することが必要と考える。
東京税理士会に会員から提供された情報で発信すべきものがあれば、文書またはホームページで発信する。
指摘されたような悪質な業者については、業務対策部とも相談して適切に対応する。

 

申告書の作成、日常からの会計帳簿の確認は税理士の活用を

クラウド会計ソフトも様々で、それぞれに特長があり、また、欠陥もあります。

現在のクラウド会計ソフトのクオリティでは、税理士抜きで会計帳簿を作成し、申告書を提出するのは危険と言わざるを得ません。

(税務署との間のやりとりにおいては、「後で直せばいいや」、と簡単には行きません)

確定申告書の作成に加え、日常の会計帳簿についても税理士との間で月次契約を締結し、レビューしてもらうことをおすすめします。

 

これからも情報発信を続けます

東京税理士会の執行部の方々には、ひとりの若手税理士の声に真摯に耳を傾けていただきました。

今回の定期総会は、東京税理士会会長、日本税理士会連合会会長、各税理士会会長を含む、500人程度の税理士が出席しており、クラウド会計ソフトの現状について全国へ広く周知することとなりました。

「貸借不一致」のワードが出た瞬間、執行部の方々のペンが一斉に動き、クラウド会計ソフトの対する関心が高いことを伺えました。

さらに、来賓として東京国税局局長(東京都等1都3県の税務署を束ねるトップ)、東京主税局局長(都税事務所のトップ)も同席していましたから、この情報が現場レベルまで知れ渡ることになり、税務調査等に影響を及ぼすかもしれません。

今後も、納税者の方々だけでなく、税理士にも積極的に情報を提供してまいります。

 

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