クラウド会計コラム③~クラウド会計あれこれ~

東京都目黒区のクラウド税理士 海老名洋明です。

税理士業界は、個人所得税の確定申告から3月決算法人の確定申告期限の5月末までが繁忙期です。
えびな税理士事務所もお陰様で多くの確定申告業務を承っております。
同時に、他の税理士からも確定申告ヘルプも依頼も受けております。

他の事務所のお客様の会計データを拝見すると、事務所により運用方法は様々でとても参考になります。
その中でクラウド会計をご使用のお客様が大変増えていることを実感します。

そこで、今回はお客様や同業の税理士のクラウド会計に対する本音の声、つぶやきをまとめてみました。

 

ベテラン税理士だってマネーフォワードクラウド、freeeくらい知っています

クラウド会計ソフトは若手の税理士しか触れたことがない、ということはありません。
ベテランの税理士はお客様が多いですから、お客様の中にクラウド会計を使用している方はおります。
一見ITスキルが高そうにないベテランの税理士の方でも、クラウド会計に触れた経験がある方が多いです。

とあるベテランの税理士にクラウド会計の評価を伺ったところ、「使いづらい」「とろい」「こんなのじゃ仕事にならない」と一刀両断でした。

クラウド会計のお客様については弥生会計にデータを移行して使用しているとのことでした。
実はそのような運用をする会計事務所がたくさんあります。

クラウド会計のお客様を弥生会計に戻した若手の税理士を私は知っています。

とかく作り手の勝手が満載で、実際に決算を作る税理士の目線に全くなっていないとの辛口の評価です。
私もその通りだと感じます。

クラウド会計ソフト会社の社員の方は自分で会社でも設立して、自分の会計ソフトで決算処理してみてはいかがでしょうか。
自分の会社のソフトの使いづらさにうんざりするはずですよ。

中小企業相手の会計ソフトで税効果会計の勘定科目をデフォルトで表示させる必要なんてないでしょ、

など税理士なら誰もが感じることに気づいていますか?

勘定科目設定画面で「船舶に公共施設負担金に商品券に、使わないよ!」とうんざりしながら、

お客様が一生使いそうもない勘定科目を非表示にするために、税理士がひとつひとつチェックを外しているのですよ。

 

銀行データを同期ができるから安心のウソ

銀行のデータは勝手に読み込まれるから安心していたら、通帳の残高や残高証明書と合わないということがよくあります。
税理士としては原因の特定のしようがありません。

ひと月まるまる同期されていない、ネットバンクのポイントも預金残高に入っていたなど症状は様々で、
結局預金通帳のコピーをもらって、ひとつひとつ確認して、という余計な作業が生じます。

当初からうまく銀行データを同期できているお客様は、ほとんどいませんね。

お客様からすると「銀行データが同期されている→入力が楽→使いやすい」、と感じるでしょうが、

「使いやすい」と感じるのと決算に必要な「正確さ」とは別の話です。

 

freeeユーザーの方、消費税危ないですよ

freeeユーザーの方は、日付と金額だけ記入して備考欄に何も書いていない方が多いですね。
とても危険です。

消費税額は原則として売上の消費税から経費の消費税を引いて算出します。
経費の消費税については、帳簿(freeeやマネーフォワードクラウドの総勘定元帳)及び請求書の保存が要件となっており、
帳簿には日付、金額はもちろん、相手先や内容を記載する必要があります。

でも、freeeは特に「取引先別」「品目別」を記入させる画面ばかり目立ち、肝心な「内容」を記入する欄がとても小さいため、

お客様の帳簿を拝見すると日付と金額だけ、という方がとても多いです。

その辺、弥生会計は、1つの取引を1行で横の目の動きで入力できますから、自然に必要事項をすべて記入するようなつくりになっています。

会計ソフトの作り手が「取引先別」「品目別」を推したい気持ちはわからないでもないですが、それは作り手の都合。
まずは税法の要件を満たすように入力させるような画面をちゃんと開発してくれませんかね。

そのうちfreeeユーザーに消費税の調査が入って多額の追徴課税、という展開が目に浮かびます。

プロの税理士からするとお客様の帳簿を見るのが怖くてたまりません。

私はこの入力画面をみてfreeeを使うのをやめました。

 

「取引先別」「品目別」タグの危うさ

これが諸悪の根源です。
freeeはこれまでの会計ソフトであった「補助科目」はなく、勘定科目に「取引先別」「品目別」コードを振ることができます。

ところがこれが曲者で、一度登録した「取引先」や「品目」はすべての科目に紐づけることができるため、

私が見た帳簿では未払金に取引先別「●カード」があり、別途「●カード」の勘定科目があったり、

未払費用の「取引先別」にとうの昔に解約した相手先や小さな買い物をしたコンビニや小売店の名称が何10個もつながっている
なんてことが起こります。

「補助科目」にせよ「取引先別」にせよ「品目別」にせよ勘定科目の下につくものは
ある勘定科目の金額の内訳を知りたいときに便宜的につけるものです。

例えば、売掛金や買掛金の残高を相手別に知りたい、というときです。

預金の勘定に「取引先別」「品目別」の項目なんてなんざ全くいりませんよ。
freeeの試算表は不要な情報だらけで見づらくてたまりません。

 

とにかくしつこい営業電話

とにかく営業電話がしつこく、freeeを解約したという声を聞きます。
税理士に対する営業電話も同様で、電話が来ても取らないことを徹底している税理士もおります。

どうやらfreeeの機能をたくさん使うと便利だから、●円払ってあの機能を使いませんか?と売り込んでいるようですが、
お客様も税理士もまずは美味しいところだけを使えればいいのですよね。

freeeの本社は五反田で当事務所から歩いてでも行けますが、この声届いていますかね?

 

freeeインストラクター制度の不思議

freeeは星付きのインストラクターになるには、契約したお客様が一定数以上で、かつ、所定の試験をパスしてください、という制約があります。

背景として、freeeユーザーから税理士が機能を使いこなしていないとの評価があるとのことです。
機能を使いこなしてもうらうために、税理士に使用法を「勉強」してもらうことでスキルアップしてほしいとの考えらしいですが、

機能や使い勝手がイマイチだから、税理士側も付き合いきれなくなるのですよね。

お客様の帳簿を初めて見た瞬間、預金やカードの同期がうまくいっていないし、消費税の観点からも危ないし、直すのに一苦労。

弥生会計に慣れてしまうと、freeeのとろい動きに付き合って、機能を覚える気になんてとてもなれません。

それにしても税理士相手に試験しますとは、また、ミシュラン顔負けの税理士に星をつけるとは、なかなか度胸がありますね。

と同業者同士で話しておりました。

別の見方をすると、お客様が急な決算をお願いするものの、税理士側がfreeeの使用感にいい印象がないため依頼を断る、

お客様の税理士の選択の幅が狭まる、ということが現実に起こっています。

 

結局、クラウド会計はだれにおすすめ?

以上の経緯から、私はこんな方にクラウド会計をおすすめしています。

〇個人事業主やネットバンク利用の法人で取引先があまりない方

〇Excelをうまく使いこなせる方

逆にこんな方にはクラウド会計はおすすめしません。

×口座、カードが多い方 →同期エラーが起こる可能性大です。
×取引先が多い方、不特定多数の方 →「取引先別」「品目別」コードでぐちゃぐちゃになるからです。
×社員が多い方や報酬の支払時に源泉徴収をする方 →源泉税の管理もしづらいです

結局、クラウド会計は年商1,000万円未満(消費税免税事業者)の個人事業主、ひとり法人に一番おすすめです。

税理士としてもある程度お客様が会計入力していただける形になるので、コミュニケーションが円滑になりやすいです。

 

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