クラウド会計コラム⑱~年末年始へ向けた注意喚起とfreee障害について~

東京都目黒区のクラウド税理士 海老名洋明です。

今年も1週間少々となりました。
クラウド会計ソフトにおいても、この1年色々なこと(危ないことが多いですが)が起こりました。

中でも最大の危機は、

2018年10月31日のfreeeでの緊急メンテナンスと称した全サービス停止障害

だと思います。

クラウド会計コラム⑭~2018年10月31日freee障害から学ぶバックアップの重要性~

その顛末は
同日中  ユーザーに対するメールによる周知
11月20日 ホームページ上に「システム障害に対するご報告」と題したお知らせを掲示
12月23日現在 サポート責任者に対して、全ユーザーにメール、ログイン後画面等で報告しない理由を質問しているものの回答なし

と、一貫して全ユーザーに情報を提供しない企業姿勢に疑問を呈してきました。

 

最高開発責任者のブログ

そんな中、12月22日に「システム障害のおわびとまなび」と称して
フリー社の開発メンバーブログに、最高開発責任者の記事が掲載されていました。

https://developers.freee.co.jp/entry/2018/12/22/235610

長文であり、文面の表現からは具体的に何を言っているのか理解しきれませんが、同業の方ならある程度は理解できる内容なのでしょう。
現場レベルの生の声で障害の顛末を掲載する手法はなかなかありません。

 

過去の報告との整合は?

えびな税理士事務所では、当該不具合についてフリー社から対面による説明を提案されましたが、記録に残すことを重視し、文面による回答を求めました。

11月8日に社長名によるA4用紙1枚の内容の薄い文書回答がありましたが、

その後、12月22日に開発担当者ブログによる「おわび」があったということは、

社長名による文書回答はいったい何? なぜ後出しによる報告? 2か月近く何やっていたの?

といった疑問が生じます。

この点、段取りという観点から物事を考えられる40-50代の部長レベルの「会社で揉まれた」人材がフリー社にはいないものと思われます。

実際、フリー社の窓口のみならずサポート責任者レベルですら、正直に申し上げて教養レベルの低い、薄っぺらい文章しか書けない人材しかいませんでした。

(たとえ下手な文章でも、全ユーザー、税理士が分かるように、潔く過ちを認めて説明を尽くせばこんな記事は書かないのですが、とかく事を大きくしたくないという姑息さが目につくのです)

 

年末に一度全データバックアップを

年末にも何らかのメンテナンスと称して、大規模な障害が起こる可能性は(さらに年末年始休暇中を理由に対応が大幅に遅れる可能性も)ゼロでありません。
また、確定申告時期はアクセスが急増することにより、サーバの障害が発生する可能性もあります。

仮に会計事務所に確定申告を依頼していても、

過去3年分の仕訳日記帳と(できれば総勘定元帳も)をお客様自らバックアップ

しておきましょう。

csv形式だと、多くの会計事務所が使用している弥生会計にもデータを移行できるのでなおいいでしょう。

 

バックアップの方法

freeeの場合 レポート→仕訳帳→(右上の)インポート・エクスポート→各社CSV・PDFエクスポート→弥生会計→そのまま出力開始

マネーフォワード会計の場合 各種設定→他社ソフトデータの移行→弥生会計→(一番下の)仕訳をエクスポート

 

ベンダーからの補償は1年分の使用料が上限

仮にベンダーの過失でデータが消失した結果、税務申告ができず追加の納税が発生、といった事象が生じても、

既に支払った使用料の1年分までしか補償してくれません。

クラウド会計コラム⑮~利用規約の読み比べ

 

障害のおわびを開発メンバーの「ブログ」で済ませる感性

開発メンバーは開発が目的となっていて、その先のユーザーの事情を思料できないのでしょう。
お客様、税理士といったビジネスパートナーの生の話を自分の足で聞こうとしないのですから当然なのかもしれません。

ブログでは、表面的にはお詫びしていますが、月末に障害を起こすことによるユーザーに及ぼす影響については何ら言及されていません。

実際に業務に支障をきたしたユーザーが自らフリー社のホームページなり、Yahoo!JAPANのタイムライン検索なりで当該ページに気付かなければ、報告を見ることができません。

「報告書を見たかったらあなたが探してね」と言っているようなもので、真摯でも丁寧でもない不誠実極まりない対応です。

おそらく、開発担当者にはユーザーのことは分からない、または関係ないという感覚なのでしょう。

「ご迷惑」ならともかく「ご心配」をお掛けして申し訳ない、との一言から、

命の次に大事なお客様の財産に関わる、という自覚を持ち合わせているとは思えません。

現場の都合ばかりを優先して、その先のお客様を見ていなかったために、製造業で相次いだ不祥事の構図と似ています。

 

「学んで」いる場合ではありません。結果を残してなんぼです。

税理士海老名がかつて勤務していた食品工場では、たとえ単価数十円の食品でも、

お客様の命に関わるとの緊張感で知恵知識を総動員して365日働いていました。

それに比べ、お客様から年数万円の使用料を得ているベンダーは何て浅はかなプロ意識でしょうか。

会計ソフトは命には関わらないというかもしれませんが、お金が無くなったらどうなるか分かりますか?

この開発ブログの文章は私には自己陶酔にしか見えません。お客様を、人間をなめています。

 

ブログの最後の一文から分かる意識

「重ねて、利用者の皆様にシステム障害によりご迷惑、ご心配をお掛けしましたことをお詫び申し上げるとともに、お客様への価値を安全に、かつ最大最速で届けられるようfreeeの開発体制を進化させ続けていきたいと思います。

つきましては、freeeの開発基盤を進化させていくエンジニアを募集しております。 興味があれば、ぜひご連絡ください!」

外部に出る責任者の文書を、推敲してもらうことはしないのでしょうかね。

最後の一言から、結局のところ自分のことしか考えていないのでしょう。

ビジネスパーソンとしての底の浅さを感じざるを得ません。

 

ユーザーの皆さまへの投げかけ

仮にベンダーが倒産その他不測の事態でサービスを提供できなくなったとしても、

ベンダーはホームページ上におわびを掲載するだけでユーザーの皆さまを全く守ってくれません。

 

戦後から血の通った人間として国民との信頼関係を構築してきた税理士と、

設立数年のクラウド会計ソフトのベンダーのどちらを信じますか?

 

クラウド会計ソフトのベンダーとの付き合い方

ベンダーの基本的姿勢

この1年、クラウド会計ソフトのベンダーとは何度も厳しいやり取りをしましたが、
こちらがいくらユーザーの不利益を指摘してもテンプレート回答ばかりで、暖簾に腕押しというのが現状です。

ベンダーの売り手視線でしか、物事をとらえることができないのです。

やり取りの中で、

「イノベーションにはミスもつきものだからこれくらいの不具合は受容してくれないと困る」

「若い会社なのだから許してください、私たちは未熟なのだから教えてください」

「だから仮に申告期限に遅れても税務署側で配慮してほしい」

「将来的に会計データを税務署と共有すれば解決する」

「個人事業主だから大した影響はないでしょ」

といったマインドが漂います。

しかし、これらはあくまでベンダーの勝手の考え方であり、現状ではクラウド会計だからと言って税務署側からの特段の配慮はありません。

また、会計データを税務署と共有するという考え方は、一部のベンダーが公的な会議で発言しており、個人情報の観点から非常に問題があると税理士海老名は考えます。

このあたり、長年の実績とシェアを有する弥生会計を中心としたインストール型会計ソフトのベンダーの方が、安心できます。

 

2018年にわかった税理士から見たクラウド会計ソフトの問題点

2018年当初はクラウド会計ソフトが更にシェアを伸ばし、使用する税理士も増えると予想していましたが、思ったほど広く普及しなかったというのが感想です。

多くのプレスリリースを出しましたが、肝心の機能の安定や改善は遅々として進まず、「外面だけ」でベンダーの価値が落ちたと感じます。

・当該ブログにあるようにベンダーの規模拡大に管理が追い付いてない

・同時に社員の質が低下し、ビジネススキルが低いうえユーザー視線に欠き、自社サービスを十分に理解していない

・不具合の修正が追い付いていないとベンダー自身が認めている

・ベンダーが近い将来(直近の確定申告期に発生する可能性が高いと考えます)またどんな障害を起こすか分からない

・サービスが縮小傾向でユーザーの不満度が高まっているうえに、再び使用料が値上げされる可能性が高く、割安感がなくなってきている

・ベンダーは経常的に赤字で資金調達により経営を維持する状態が続いており、経営危機により突如サービスを受けられなくなる可能性がある

・ベンダーがお客様に不要なサービスを一方的に提供し、知らぬ間にお客様が不利益を被る可能性がある

・若手税理士間でも、いわゆるフィンテック企業であるベンダーの変質に気付き始め、お客様に自信をもっておすすめできなくなりつつある

・2018年に露呈した様々な問題点が税理士会の会長以下、ベテランから若手まで業界に広く知られることとなり、従来の会計ソフトを再評価する動きがある

・税務調査時も、税理士が関与しないクラウド会計ソフトを使用した帳簿に対する視線が厳しいとの情報あり

ということから、税理士としては今のクオリティのクラウド会計ソフトは、リスクの説明なしにはとてもおすすめできません。

ひとり事業主で税理士の関与がない方以外にはリスクが大きすぎる

と考えます。

 

ひとりでクラウド会計ソフトをご利用の方の不安を解消します

ヘルプデスクは何も助けてくれません

コールセンター勤務を経験された方(私も短期間ですが経験があります)ならわかると思いますが、電話の先の人材は派遣会社経由で会社を知らない、といった場合がほとんどです。

クラウド会計ソフトのヘルプデスクの人材の雇用形態は知りませんが、間違いなく会計も税務も知識をほとんど持ち合わせていません。

簿記検定を受けたことがあればいい方で、2級があればエース級でしょう。

フローチャートでこう聞かれたらこう返せ、困ったら上に回せ、の作業を繰り返しているだけです。

そのヘルプにもつながりづらいし、何も解決しないし、で時間の無駄になることが多いです。

有料のサポートプランに加入していても基本的な対応は変わりません。

そもそも、税理士法の関係から、税務上の疑問(例えば、これは経費になるの?)に回答することはできないのです。

 

プロの税理士によるサポートのご活用を

えびな税理士事務所の税理士 海老名は、プロの税理士としてお客様の疑問や不安に丁寧に向き合います。

お客様ひとりひとりのために心を込めたオーダーメードのサービスを提供します。

クラウド会計ソフトに潜む危険な点や注意すべき点をお客様に十分に説明するとともに、

東京税理士会の定期総会での質問、

日本税理士会連合会、東京税理士会との懇談会での会長以下との懇談会での情報発信といった形で、

お客様と密接にかかわる税理士業界に対しても積極的に行動しています。

クラウド会計ソフトを使用していて不安に思っている方は、遠慮なくご連絡ください。

 

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