東京都目黒区のクラウド税理士 海老名洋明です。
クラウド会計ソフトfreeeは、2018年10月31日の12時30分から15時46分まで
緊急システムメンテナンスとして、すべてのサービスが一時停止しました。
月末は、会計のみならず、人事、請求といった業務の締めで最も忙しい時ですから、「何でこのタイミング!?」と焦り、怒り、様々な感情が沸き起こったことと思います。
仮に日をまたいだとしたら、申告が遅れることになりますから、さらに影響が大きくなったことでしょう。
これまでは、貸借不一致仕訳が登録される現象が起こっても、ウィークリーメールが送信されない現象が起こっても「今後の開発にご期待ください」とのんきな返事が来るだけでしたが、
今回は「多大なるご迷惑、ご心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。」と述べているので、事態の重大さを少しは理解しているようです。
えびな税理士事務所の業務には影響ありませんでしたが、今後の使用に堪えうるかを判断するため、以下の事項についてサポートに質問しました。
1 原因の詳細
2 緊急メンテナンスの内容の詳細
3 再発防止策の詳細
4 今回のエラーが原因で申告期限に間に合わなかった場合の補償の有無
5 1-3月の個人所得税申告、4-5月の法人税申告の繁忙期に当該事象が再発する可能性の有無
この回答から分かる企業姿勢によっては、他の会計ソフトに移行するユーザーが増えるかもしれません。
今回の一連の現象について、税理士目線からいくつかお伝えできることがあります。
(2018年11月12日追記)
文書回答があり、ほとんどホームページのお知らせと同内容でしたが、
原因は「システム運営オペレーションの操作において誤った操作があったため」とことでした。
「システム運営オペレーション」とは、具体的にどのようなものなのかは分かりませんが、
人為的ミスが原因であると読み取れます。
freee社においては、過去のやり取りから人員不足であると認めており、今後も同様の事態が起こる可能性は否定できません。
それにしても、然るべき立場の方からの文書回答を求めたところ、代表取締役名で文書が提示されたということは、
やはり品質保証部門が存在しない(または機能していない)ということなのでしょうか。
(2018年11月26日追記)
11月20日に「システム障害に関するご報告」と題してfreee社ホームページに追加の報告が掲載されています。
新たな情報は「新機能開発上のオペレーションのミス」という程度ですが、この報告をホームページ上に掲載するだけで、
メールや会計等のトップ画面でユーザーに周知することを一切行っていません。
この点、ユーザーにメール、トップ画面等で周知しない理由を問いただしていますが、回答がありません。
「もう直ったからいいでしょ」とでも言いたいのでしょうか。
表向きには意見に耳を傾けること言いながら、職業専門家が指摘した都合が悪い事案は無視する、というのは会社として子どもそのものです。
システム障害というよりは製品事故であると税理士海老名は考えますが、最後まで説明を尽くさない対応は他業界から見ると相当「いいかげん」です。
freee社の企業としての信用度には大いに疑問符が付きます(ユーザーの皆さまにおかれましては、このような新興企業特有のリスクをご認識の上、ご使用ください)。
結局、freee社は最後まで誠実に説明を尽くしませんでした。
インストール型会計ソフトにはそもそも緊急メンテナンスはない
今回の事象においては、「中の人(freeeのメンテナンス担当者)頑張れ」というツイートも多く見かましたが、そもそも弥生会計などのインストール型の会計ソフトにはメンテナンスがあるから使用できません、ということ自体ありません。
バージョンごとに仕様は変わっても、一度インストールしたら最後まで画面や使用方法が変わることはありません。
さらに、クラウド型よりもインストール型の方が、開発の歴史が長いですから、過去の失敗の蓄積がたくさんあるため、深刻・重大なエラーが出づらいのです。
他のクラウド会計ソフトでも、このような事象は起こっていません。それだけ異常な事態なのです。
使用料金も、月額制であるクラウド会計ソフトは値上げ傾向で、インストール型ソフトを一度で買ってしまった方が安い、と判断されるユーザーも多いことでしょう。
データバックアップの観点から税理士に依頼するメリットあり
クラウド型ではベンダー側に不測の事態が起こったら、インストール型では自分のパソコンが故障したら会計データにはアクセスできなくなります。
会計データにアクセスできなくなったら、もう一度入力をやり直さなければなりません。レシートその他証憑がないと税理士だってお手上げです。
1年分ではありません。多くの税務調査は、過去3年分を調査の対象としていますから、前年以前の会計入力の必要も生じるかもしれません。
どの会計ソフトも業務の効率化を売りとしながら、これでは何のために会計ソフトを買ったのか分かりません。
えびな税理士事務所では、データバックアップの観点と会計帳簿の正確性を確認するため、
決算ごとにクラウド会計ソフトのデータを弥生会計にもコピーし万全のバックアップ体制を取っております。
お客様自らが会計データを他のソフトにコピーすることはとても非効率です。
日常の税務、会計の相談以外にも、
データ管理の観点からも税理士と顧問契約を締結することは有効
であると考えます。
定期的なデータのバックアップのすすめ
えびな税理士事務所では、これまでもクラウド会計ソフトを使用していても、定期的にcsvなりPDFで会計データ(仕訳帳、総勘定元帳)を、パソコンのローカルディスクやオンラインストレージ上に保管することをおすすめしておりました。
例えば、こんなときどうしますか?
・クラウド会計ソフトのベンダーが倒産した
・会計データを保管されているサーバの周辺で自然災害にあった
こんな現象が起こったとき、過去の会計データには永久にアクセスすることができなくなります。
決算ごと、災害が起こったときは特に、また、できたら3か月なり半年なりに一度、会計データをバックアップしておくことをおすすめします。
最悪の事態が起こったときも、税理士が助けてくれるかもしれません。
税務署は助けてくれない
クラウド会計ソフト側に不測の事態が起こったとき、税務署は何をしてくれるか。
答えは基本的に「何もしてくれない」です。
たとえ、申告期限間際にデータへアクセスできなくなっても税務署は何も助けてくれません。
税務署が助けてくれる(申告期限を延長してくれる)のは、自分の周りで自然災害が起こった時くらいでしょう。
データ(総勘定元帳)がないまま税務調査にあたると、青色申告の取消し、いった不利益を被る可能性もあります。
【注意喚起】繁忙期はもっと危ないかもしれない
実は、freeeにおいては、毎週月曜日に送信されるウィークリーメールについて、2018年10月29日の月曜日においては通常の週より配信が遅く、30日の火曜日にまたがるお客様もいらっしゃいました。
税理士業界の10月は閑散期なので、freee側としてはシステムメンテナンス等を行っていたのかもしれません。
でも、この調子でこれからの繁忙期(個人の確定申告は1-3月、3月決算の法人の確定申告は4-5月)は大丈夫なのか?という疑問を持たざるを得ません。
申告期限間際に取り返しの利かない大きな問題が発生するかもしれません。
知らないうちにデータの全部または一部が破損するかもしれません。
freeeにおいては、不具合の修正が追い付かないとサポートが認めています。他の会計ソフトのベンダーはこんなことを言いません。
もはや何が起こるか誰にも分からない会計ソフトなのです。
少なくとも税理士業界で、この顛末を温かい眼差しで応援する気持ちになる人はいません。
動きが遅く(確定申告時期はさらに遅くなります)、クリックしても表示されない、8月を押したのに7月の内容が表示されるなど、日によって挙動が全く異なり、会計ソフトとして不安定すぎて、お客様におすすめできる状況にないのです。
ユーザーの皆様においても、今後のfreeeの動作を注視し、ご自身でリスクを認識して使用する必要があります。
えびな税理士事務所では
この使い方で大丈夫?いった疑問にお答えするクラウド会計判定サービスや、
freeeから他ソフトへのデータ移行サービス(変えるのでしたら年末を待たずに今行うことをおすすめします)をご提供しております。
これまで20種の会計ソフト・税務申告ソフトの使用実績を有する税理士が、豊富な経験を踏まえお客様の最適な運用方法をご提案しております。
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経験豊富な税理士によるアドバイスを是非ともご活用ください。