東京都目黒区の税理士 海老名洋明です。
本年も残り1月半となり、年末調整、確定申告の時期が迫ってきました。
お陰様でえびな税理士事務所にも、確定申告前のお客様からお問い合わせを多く頂戴しております。
その中には、「簿記を知らない」けど「帳簿を何とか作成したから見てほしい」という方がいらっしゃいます。
本業の時間を割いて苦労して作成したことが伝わりますが、そこまで頑張らなくてもお客様、税理士の作業量、報酬のバランスを取れる方法があったのに、と感じることが多くありました。
そこで今回は、初めての申告で税理士に依頼するのであれば(少なくともえびな税理士事務所は)、これくらいの心持ちで臨めば十分ということをお伝えします。
最初から申告書に対応した帳簿を作ろうとしない
初めての申告から、会計や税務の知識があろうとなかろうと「損益計算書」「貸借対照表」を作ることになります(法人は両方必須、個人は場合によっては貸借対照表不要)。
経理の経験者でない限りは、「簿記」「借方」「貸方」といった言葉が高い壁に感じるはずです。
事業開始届を提出した後、税務署で2時間程度の講習が開かれますが、これだけで全部できるのでしたら誰も苦労しません。
自分で頑張ろうとする事業主の皆様は、ネットや知人の情報を基に会計ソフトを購入するものの、いつも使うソフトと異なる挙動にストレスを感じ、帳簿の作成が後回しになるという悪循環です。
そんな方には、いつも使い慣れたExcelを使って
- 日付 月と日を別のセルにすると作業が楽です。
- 金額 税込金額を入力しましょう。
- 内容 「●●コーヒー 打ち合わせ」といった感じでまとめるだけで十分です。
- 勘定科目 税理士が後で適切な科目に修正しますので直感で十分です。
これだけまとめていただければ、えびな税理士事務所では十分です。
ある程度のITスキルがある税理士でしたら、この方法で作ったExcelファイルを加工して、会計ソフトにインポートする方法で手早く会計帳簿を作ることができます。
会計が分からないのでしたら会計ソフトを最初から購入する必要はありません。
預金データをcsv形式で提示する
もちろん、会計事務所としては帳簿を作成している方がありがたいですが、預金通帳の実際の残高と帳簿上の残高が合っていない方がとても多いのが現状です。
その原因として
- 初期の残高(繰越残高)を適切に設定していない
- 事業外の取引を帳簿に反映させない(クラウド会計ソフトで特に多い)
ことが挙げられますが、この話が良く分からないのでしたら素直に
- ネットバンクから1年分の入出金明細を
- csv形式で
税理士に提示することをおすすめします。
通帳コピーでもいいですが、記帳量に比例して会計事務所側の作業量が多くなりますので、報酬を抑えたいのでしたら、csv形式で提示することをおすすめします。
会計ソフトを年払いで契約しない
預金の同期機能が売りのクラウド会計ソフトですが、会計事務所からの評価は高くなく(提示される帳簿の正確性が低い、動作が遅く作業が非効率といった理由)、若手の税理士ですらクラウド会計ソフト利用のお客様をお断りしている会計事務所もあるくらいです。
結局、どの会計ソフトも「使いこなす」ことが必須で、会計知識ゼロで申告までできるソフトは、よほど簡単な税制にならない限り(預金残高の増差に課税するとか)は永遠に現れません。
楽、便利というその会計ソフトで作った帳簿、合っているか確認しましたか?味見をしないでお客様に料理を出す料理屋はどこにもありません。
味見をしないで、塩(売上)が2倍がなったり、砂糖(源泉所得税)を入れ忘れた料理(帳簿)がお客様に提供された結果、後でクレーム(税務調査で追加納税)になったケースがたくさんあります。
税理士に確認してもらうことは大切ですが、最初から会計ソフトを購入してしまうと、税理士の選択の幅が狭まります。
自分に合う税理士を慎重に検討したいという方は、会計ソフトの契約をする前にExcelと預金のcsvファイルを持って、何人かの税理士に相談されることをおすすめします。お客様に最適な運用方法を提案してくれるはずです。